歯科医院の売上構造+ “ 起業家精神”が経営のキモ

◎歯科医院の売上の中心となる「保険診療」と「自費診療」

クリニック起業術の第2章では、歯科医院経営における売上構造の理解と、自由な経営を実現するためPEST分析を交えながら、経営の知識を深める方法をご紹介しています。
こちらサイトでは、売上構造について解説してまいります。

釈迦に説法ですが、一般的に歯科医院経営において、売上の中心となるのは、保険診療と自費診療の2つがメインです。医療機関にとっては当たり前に存在しているこの保険診療という制度ですが、見方を変えると、患者さんにとって、保険診療は“ 7割引のメニュー”です。割引のない“自費”の一般ビジネス社会から見ると、保険診療は非常に特殊な存在です。

そのため、クリニックの経営で、売上を上げるという側面でも、保険診療の位置付けについて理解を深める必要があります。
ここで、保険診療について簡単に説明すると、この制度は、1961 年に施行された「国民皆保険制度」にはじまります。健康保険に加入しているすべての患者は、どの医療機関であっても同じ内容の診療を、同じ金額で受けることができる仕組みのことで、この制度によって、国民すべてに平等な医療が行き届くようになりました。

※厚生労働省:医療経済実態調査はこちら

医療行為として行われる技術やサービスには細かく値段が設定されており、それらの合計額が医療費であり、患者は、その医療費の全額ではなく、一部だけを支払えば受診できるようになっています。

◎メニューと価格が決まっている保険診療
経営という観点で、この保険制度の特殊性がどこにあるのかというと、まず1点目は、患者の負担額は医療費の一部である、ということです。
2020 年6月現在、0歳から義務教育就学前(6歳)までは2割負担、義務教育就学後から70 歳までは3割負担、70 から75 歳までは2割負担(現役並み所得者は3割)、75 歳以上は1割負担(現役並み所得者は3割)と
なっています。

言ってみれば、保険診療を受診する患者側は、最初から7割引以上のメニューを提示されているようなものなので、繰り返しますが、一般ビジネスとは異色の条件であることの理解は必要です。

2点目は、保険診療であれば、基本的にどの医療機関であっても同じ内容を同じ金額で提供している点です(施設基準による違いを除く)。
医療機関以外の、飲食店やITサービスなどの企業が開業する場合、サービスの内容や販売金額、利益率などを鑑みながら、独自にメニューを考え、開業することができます。一方、医療機関の場合、保険診療については、はじめから治療(メニュー)の内容だけでなく、金額も既に決まっています。

つまり、開業する際にコースやメニュー、価格を決める経験を、保険診療を主体とするクリニック経営の場合は経験しないため、自費の金額設定で「いくらにしたらいいんだろう」と難航するケースが非常に多いのです。

この環境をセブン- イレブンのようなフランチャイズチェーンに例えるなら、国がフランチャイズの本部(親)で、クリニックはその加盟店(子)のような位置付けと酷似しています。保険診療を主体にするということは、本部(国)が決めたメニュー、金額に従って売上を構築することを意味するので、仕入れる材料の価格や保険改正の内容によって売上利益が変化し、経営の方針までもが、左右されることになります(今後の法律の改正で、歯科衛生士が独立できるような< 医師の指導がなくても> 改変がなされた場合、衛生士が自ら仲間たちと開業することも十分にあり得ますから、環境は激変するでしょう)。

また、開業前から保険診療の位置付けを理解しないまま経営をはじめると、結果として戦略面、特に自費診療にシフトする場合などの“マーケティング”と“ブランディング”において、非常に難航する結果となります。

その難航する代表的な理由は、
①患者に保険診療が定着すること
②スタッフに保険診療が定着すること
③マーケティングとブランディングの知識と価値観が、経営者に身につ
かないことの3つです。

こちらの3つは、別のブログで解説してまいります。

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